制約理論(TOC)のインプリメンテーション

マーク・ウオッペル著 小林英三訳
PDF版 定価:1,000円 (税込)

表紙:制約理論(TOC)のインプリメンテーション

本書は、アメリカなどで、TOCのインプリメンテーションに豊富な経験を持つ著名なコンサルタント、マーク J. ウオッペルの"Manufacturer's Guide to Implementing the Theory of Constraints"の翻訳で、セント・ルーシー社/APICSの制約管理についてのシリーズの中の1冊で、今年出版された同シリーズの最新の本です。

これまでに日本で出版されたTOCの本の中には、「TOCは優れた考え方ではあるけど、それでは、実際の生産の場に、一体、どうやってこの考え方を導入、展開したらよいのか」という問いに答える本はありませんでした。

そこで、著者は、この本の翻訳を決意しました。本書がいささかでも、日本の製造現場でのTOCの普及に役立てば、これに優る喜びはありません。・・・・・

追加書籍情報

訳者の書いた序

 2001年5月に、とうとう、エリヤフ・ゴールドラットの『ザ・ゴール』の日本語版が、ダイアモンド社より出版されました。この本の原著は15年以上前に出版され、250万部以上も売れたという本です。ちょうど、この本の日本語版が出版される直前の5月9日に、日本総合研究所(JRI)主催による「TOC実践による経営革新セミナー」が開催され、訳者も出席しました。そこでは、AGIシンガポールのエリック・デ・スメット博士による"An Introduction to the Theory of Constraints" と題する約100枚のスライドを使った講演がおこなわれました。訳者は、コーヒー・ブレイク、および、昼の休み時間に同博士と会話をする機会がありました。そこで、単刀直入に「AGIの人に、じかに、お話するのは、これが初めてなので、うかがわせて頂きますが、この国では、ゴールドラット博士は日本が嫌いなのだと思われています。だから、彼の著作はたくさんあるのに、日本語に訳されたものは、これまで1冊もないのだと思われています」。彼の答は次のようなものでした。「生産に関して、日本は強すぎ、お金もたくさん持っていました。そこで、日本に対抗するため、ゴールドラット博士は、まず、米国、および、西欧諸国の製造業の力を回復させること、ついで、発展途上国の製造業の競争力を強化させることを意図したためで、日本が嫌いと言う訳ではありません」という趣旨のことを述べられました。同博士の言わんとしたことは、「(1980年代の世界経済の環境の中で)日本で、早い段階から、制約理論(TOC) が普及してしまうと、米国、西欧諸国、そして発展途上国の製造業は、日本の製造業にやられてしまうので、ゴールドラット博士は、彼の著作の日本語への翻訳を許さなかった」ということです。著者は「なるほど、それで、漸く、理解できました。だから、近々、『ザ・ゴール』の日本語版が出版され、そして、AGIがJRIとアライアンスを結び、貴方が、今日、ここで、日本の聴衆に講演なさっておられる訳ですね」と話しました。彼は、ニヤリとしたように思います。これまでに、同様の話を二人のアメリカ人から聞いています。『ザ・ゴール』の翻訳書は、発売1ヶ月で15万部も売れたそうですが、漸く、日本でのTOCへの関心が高まってきているように感じている昨今です。

 本書は、アメリカなどで、TOCのインプリメンテーションに豊富な経験を持つ著名なコンサルタント、マークJ. ウオッペルの"Manufacturer's Guide to Implementing the Theory of Constraints" の翻訳で、セント・ルーシー社/APICSの制約管理についてのシリーズの中の1冊で、今年出版された同シリーズの最新の本です。これまでに日本で出版されたTOCの本の中には、「TOCは優れた考え方ではあるけど、それでは、実際の生産の場に、一体、どうやってこの考え方を導入、展開したらよいのか」という問いに答える本はありませんでした。そこで、著者は、この本の翻訳を決意しました。本書がいささかでも、日本の製造現場でのTOCの普及に役立てば、これに優る喜びはありません。

 2001年7月14日現在、amazon.com には、本書に関する読者のブックレビューが3つ載っており、いずれもが、「星5つの評価」をしています。

 その一つは、本書にも出てくるある会社の人からのもので、1993年から著者と知合いの人のようですが、「うちの会社がTOCの購入、展開を始めたときに、本社が書かれていたなら、もっと早く、現在の状態を実現できたと思うよ。TOCの購入、展開をスムーズに、そして、早く行いたい人には、必読の書」と言っています。

 また、別の人は、「この本には、生産に携わる人たちだけでなく、会社での業務全般にとっても役立つことがたくさん書かれています。わたしは、本書に、実務で役立つ貴重な情報がたくさん入っているのにびっくりしました。本書は、『TOCの購入、展開についてのトレーニング・プログラムや読書からの知識』と『TOCの導入、展開の際に、行わなければならないこと』との間にあるギャップを埋めてくれます。本書は、現場でのドラム・バッファ・ロープシステムやバッファ管理を成功させ、かつ、継続させるためには必読の書です」と書いています。

 3番目の人はコンサルタントと思われる人ですが、「マーク・ウオッペルが書いたこの本は、製造を業務としている企業が改善を行うのに必要なハンズ・オン、ハウツウ、情報、教育についての情報を提供してくれる、最も役に立つ情報源です。わたしは、本書に書かれているアイディアのいくつかを実行してみました。そうしたら、客先の業績が本当に改善し、仕事もやりやすくなりました」と書いています。

 マーク・ウオッペルは、本書の第3章で、「『自分の工場での制約管理の購入、展開を誰かにやって貰う』ということはできません。それは内部の力によってのみ行えることです」と書いていますが、これは正しいと思います。となると、内部の人が、自分たちのリーダーシップと責任で、TOCを導入、展開しなくてはなりません。その意味で、本書がいささかでも役立てば幸いです。

 現在、訳者の認識している範囲では、TOCについての日本語文献は8冊ほどあり、他にも、近々、数冊の本が書店の店頭に並ぶと聞いております。例えば、ダイアモンド社より、ゴールドラット博士の"It's Not Luck" が今秋出版されるとのことです。数年前に、稲垣公夫氏の著書『TOC革命』が出版される以前には、1冊もなかったことを考えるとまったく夢のようです。このうち、訳者も数冊貢献しましたが、TOC関連の本を翻訳するという意味での訳者のエネルギーも、ぼちぼち、底をつきまじめました。今後は、小生よりも若い方々のお力で、ゴールドラット博士の"The Haystack Syndrome"、"The Race" などの基本的な著作など、TOCの日本語文献の、一層の充実が企図されることを願ってやみません。また、『制約管理ハンドブック』の著者であるコックス博士が、『ゴールドラット博士の思考プロセスは、おそらく、20世紀に開発された最も重要な経営ツールだと思います』(「制約管理ハンドブック」第11章)と絶賛しているゴールドラット博士の問題解決/思考プロセスについての本を、どなたか、翻訳されませんか。

 この分野の本として、コックス博士は、セント・ルーシー社/APICSの制約管理シリーズのL. J. シャインコフの書いた"Thinking for a Change" を推薦しています。また、Eli Schragenheim の"Management Dilemmas" も、TOCが、実は、生産管理手法というレベルのものではなく、経営レベルの手法であることを教えてくれるので、この翻訳も期待されます。

2001年7月14日
小林英三