リーンプロジェクトマネジメント

表紙:リーンプロジェクトマネジメント

ラリー・リーチ著 小林英三監訳 
岡野智加/酒井昌昭/津曲公二/平鍋伸忠/藤川博巳訳
PDF版 定価:1,500円 (税込)

書名
「リーンプロジェクトマネジメント」
副題
「リーン、クリティカルチェーン、PMBOK GuideTMを統合した、プロジェクトマネジメントのバイブル - CCPM(クリティカルチェーンによるプロジェクトマネジメント)の名づけ親が著した実務者のための『プロジェクトマネジメントのバイブル』」。クリティカルチェーン、PMBOK GuideTM、リーンを統合したPMの業界標準。本書により、プロジェクト期間は、確実に半減する。
著者
ラリー・リーチ著
定価
2900円(本体+税)
監訳者
小林 英三(こばやしえいぞう)
MSI株式会社 代表取締役会長
日本TOC推進協議会名誉会長
訳者(あいうえお順)
岡野 智加(おかのともか)
株式会社アイ・ツー・マネジメント 代表取締役、PMP、
PMI東京支部PMBOK委員会実用化WG主査
酒井 昌昭(さかいまさあき)
株式会社ロゴ 取締役副社長、エグゼクティブ・コンサルタント、PMP
MPUF (Microsoft Project User Forum) TOC-PM研究会主幹事、PMAJ会員、PM学会員、PMI会員
津曲 公二(つまがりこうじ)
株式会社ロゴ 代表取締役社長、PMAJ会員、PM学会員、PMI会員
平鍋伸忠(ひらなべのぶただ)
MSI株式会社
TOCコンサルタント
藤川博巳(ふじかわひろみ)
プロセスチェーン研究所所長
技術士、中小企業診断士、PM学会会員、経営情報学会会員、(社)日本工業技術振興協会理事、技術士協同組合理事

本書の著者であるラリー・リーチは、売れっ子の「プロジェクトマネジメント」のコンサルタントで、多くのコンサルティング実績で知られておりますが、これまでの長い経験に基づき、プロジェクト管理の領域で、「リーンの概念」、「TOCのクリティカルチェーン」、そして、「Project Management Body of Knowledge (PMBOK GuideTM)」を統合した「リーンプロジェクトマネジメント」を提唱していますが、本書は、これらを、初めて、本という形にまとめたもので、そのノウハウを、全8章で著したのが本書で、その内容は、プロジェクトマネジメントの「新しい業界標準」の最右翼候補という専門家もいます。

本書のサブタイトルにある「バイブル」は、本書(訳書)の草稿を輪読したあるプロジェクトマネジメントの専門家が、「これは、プロジェクトマネジメントのバイブルだ!」と叫んだところからきています。

本書は、プロジェクトマネジメントを8つのフェーズに分け、そのそれぞれについて、深い洞察と豊富な経験から、教訓を引き出しています。教訓と言っても、そのままノウハウとして、テンプレートのように実行可能なところが、バイブルたるゆえんです。

また、プロジェクトマネジメント領域で普通名詞になっているCCPM(Critical Chain Project Management)は、著者ラリー・リーチが創り出した言葉です。

また、著者ラリー・リーチは、マイクロソフト社の支援を得て、日本語版が発売されている「クリティカルチェーン対応のソフトウエア製品」である「CCPM+(日本語版)」の開発者でもあります。(CCPM+(日本語版)については、http://www.msi-jp.com/ccpm/index.html をご参照)

内容の概要

第一章

原理1:プロジェクトシステム

 プロジェクトを成功させて完了するためには、人々、プロセス、および、成果物を要素として構成されているシステムをガイドしなければなりません。そのためには、まず、自分の環境、および、プロジェクトを対象とする有効なシステムを定義しなければなりません。ムダを含まない、スリムな「リーン思考(lean thinking)」により、プロジェクト・ポートフォリオ、および、個々のプロジェクトの計画の作成、実行、コントロールの分野で、これまでのプロジェクトの行い方を改善し、ムダを排除すれば、「常時、これまでの時間の半分」で、プロジェクトを引き渡せるようになります。

第二章

原理2:人々を統率する

 2番目の原理は、プロジェクトへの関心を持たせ、人々、すなわち、ステークホールダーをリードし、プロジェクトの成功に喜んで協力するようにしむけることです。プロジェクトを行っている期間を通して、プロジェクトの成功に向けて、ステークホールダーからの積極的なサポートを受け続けることのできるプロジェクトリーダーは、どのような嵐も乗り越えられます。ステークホールダーに、個々の人が行うタスクやチームで行う仕事の状態を、先が見通せるかたちで説明し、避けられない問題や衝突を上手に解決し、すべての人にとりwin-winのソリューションを導き出すことができてこそ、有能なプロジェクトリーダーです。

第三章

原理3:プロジェクト憲章

 プロジェクトチームの成功には、プロジェクトビジョンをしっかりと定義し、それをプロジェクト憲章として表現し、それに基づいてチームを連携させることが不可欠です。プロジェクト憲章は、投資対効果検討書のように、そのプロジェクトが、財務的に、顧客との関係で、業務処理的に、また、従業員との関連で、どのような結果をもたらし、したがって、会社としての目標の達成にいかに貢献するかを示すものでなければなりません。プロジェクト憲章を作成するフェーズでは、プロジェクトの実行中に必要となるアクションや起りえる問題をあらかじめ識別し、それらに上手に対応したり、解決したりするにはどのようなプロセスが有効かを定めます。

第四章

原理4: 適切なソリューションの選択

 プロジェクトを成功させるには、プロジェクトにより実現しようとしている事業機会を現実のものとし、そこから利益をあげられるようにしたり、対象とする問題の解決を具体的に行ったりできる適切なソリューションを導入、展開しなくてはなりません。適切なソリューションの導入、展開には、まず、「プロジェクトが成功である」と利害関係者が認定するための要件を理解し、これらの要件を、プロジェクトのスコープに、理解できる言葉で翻訳し、責任を割り振ることが必要です。適切なソリューションは、「8つのタイプのムダ」を少なくするために不可欠です。これにより、顧客の要件を満たさない成果物が回避できます。

第五章

原理5: 変動性を管理する

 この世界は、変動性と不確実性に満ちています。成功するには、フローを管理しなければなりません。変動性を管理するには、変動性とは何かを理解し、そして、2つのタイプの変動性を対象に、それらを適切にコントロールするすべをモデル化しなければなりません。2つのタイプの変動性とは、日常的に発生する通常の統計的変動(Common Cause Variation)と特別な原因による変動(Special Cause Variation)で、前者にはバッファにより、後者にはリスク管理により、対応します。一般的に使用されるバッファには、プロジェクトバッファ、合流バッファ、キャパシティ制約バッファ、および、コストバッファの4つの種類があります。通常、簡単な方法でバッファサイズを決めてやるとうまく機能します。

第六章

原理6:プロジェクトのリスクの管理

 プロジェクトのリスク管理とは、あらかじめ、プロジェクトで発生する可能性のある「特別な原因による変動」の発生の確率を減少させ、放置したら生まれてしまう望ましくない結果の発生を、減少させるアクションを作成することです。積極的なリスク管理は、プロジェクトが存続する限り行い、その内容は、リスクの識別、分析、および、影響の軽減です。

第七章

原理7:プロジェクト計画

 プロジェクト計画は、すべてのプロジェクト利害関係者に、プロジェクトの成功に向けたロードマップを提示するものです。プロジェクト計画では、プロジェクトを記述し、プロジェクトの目的を実現するプロセスが書かれています。プロジェクトのスケジュール、および、スケジュールのコントロールは、プロジェクト計画の主要な要素で、その成否は、資源へのプロジェクトタスクの負荷が平準化されているかどうか、また、クリティカルチェーン計画に沿ったものであるかどうかにかかっています。プロジェクトを、ボトルネックドラム資源を考慮してパイプライニングし、個々のプロジェクトの開始日付と完了日付を決定します。すべてのプロジェクトで、少なくともプロジェクトの状況を関係者に伝達する方法と、変更管理のプロセスを含む、必要十分なプロジェクトの実行手順が必要です。

第八章

原理8:実行

 「リレー走者のように、自分の役割を懸命にやり遂げようとする姿勢から生まれるパフォーマンス」が、本書のテーマである「リーンプロジェクトマネジメント」の根底をなすものです。プロジェクトリーダーは、タスクマネジャーが次に行うタスクを適切に決めることを助け、これにより、プロジェクトの中で、「リレー走者が生み出すパフォーマンス」を実現します。プロジェクトの進行中に、プロジェクトチームは、タスク情報を見て、失われたバッファを回復するためには、プロジェクトの中で、いつ、どこでアクションをとるべきかを知ることができます。有能なプロジェクトリーダーは、常に、適切に成し遂げられたことを識別し、それに報い、そうすることで、成功に向けプロジェクトに勢いをつけます。計画したことを、すべて実現して、ステークホールダー全員で心からお祝いできるように、プロジェクトを完成してください。

「リーンプロジェクトマネジメント」で得られる利点

ラリー・リーチ氏は、「リーンプロジェクトマネジメント」で得られる利点として下記のことを挙げています。

  • プロジェクトが成功する
  • プロジェクトが、常に、スケジュール内に完成する
  • プロジェクトで実現しようとしたことが、すべて、実現できる
  • プロジェクトの費用が、予算内に納まる
  • 市場での優位性が得られ、事業が成長できる
  • プロジェクト期間が短縮する
  • 前に行った類似プロジェクトに較べ、プロジェクト期間が、すくなくとも半減する
  • 個々のプロジェクト計画は、少なくとも、25%は短縮する
  • 並行的に行われる複数プロジェクトのプロジェクト期間が、大幅に、短縮する
  • プロジェクトでの変更が少なくなる
  • 業務改善プロジェクトで実現しようとする改善の時期が早まる
  • 投資のペイバック期間が短縮する
  • プロジェクトチームのストレスが減り、満足感が高まる
  • マルチタスキングから生まれる混乱が少なくなる
  • インプリメンテーション時点で、一つのタスクに集中できるようになる
  • 変更が少なくなる
  • やり直しが少なくなる
  • 複数のプロジェクトを担当するマネジャーのストレスが小さくなる
  • 「期日遵守」を前提としたタスク管理によるプレッシャーが除去される
  • タスクを実際に行う人たちは、バッファ・レポートを参照することで、自分の担当のタスクの優先順位を決められる
  • 高い優先順位を持つタスクが、突然、飛び込んでくることが少なくなる
  • プロジェクトの現状把握の単純化
  • ステータスが、素早く、容易に判る
  • リアルタイムでプロジェクト・ステータスが判るので、レポートを待つ必要がない
  • ステータスがリアルタイムで判るので、バッファ、チェーン、タスク別に、どこに注意を向けるべきかが即座に判る
  • バッファ・レポートにより、適切な意思決定が行える
  • プロジェクト開始のパイプライニングについての意思決定が行える
  • プロジェクト管理が単純化され、容易になる
  • プロジェクト・マネジャーは、何処に注意を向けたらよいかが容易に行える(早すぎるタスク着手が減る)
  • プロジェクト計画作成が単純化されるので、ペーパーワークが少なくなる
  • プロジェクト・ステータスの報告が単純化する
  • ステータスの把握により、その時点で、計画を作成すればよいのか、それとも、アクションを起こさなければならないのかが意思決定できる
  • ステータスの把握により、どのタスクに、優先的に資源を割り当てたらよいのかが判る
  • 同一の資源量で、プロジェクトのスループットを増大できる
  • 資源についての争いが減る
  • 同一の資源量で、より多くのプロジェクトが、より早く完了する
  • 足りなくなってしまった資源の追加が減る
  • 資源に起因する遅延が減少する
  • プロジェクトのキャッシュフローが改善する
  • プロジェクトのROIが改善する

参考資料

CCPMの成果(出所:「ウソっ! プロジェクト納期を半減?」、マーク・ウオッペル著、ラッセル社刊)

CCPMの成果の例

Airgo Networks社
次世代ワイヤレステクノロジー製品の開発
第1世代の最初のシリコン・チップの作成から、量産までのサイクルタイムは19か月であった。
第2世代の最初のシリコン・チップの作成から、量産までのサイクルタイムは8か月になった。
Daimler Chrysler社
自動車用製品の開発
プロトタイプ作成までのサイクルタイムは10週間。
プロトタイプ作成までのサイクルタイムは8週間。問題が発生したときの「大騒ぎ」が大幅に減少し、かつ、納期遵守度は83%も向上した。
Eircom, Ireland社
テレコミュニケーションネットワークの設計と設置
納期通りの納品は75%以下であり、平均サイクルタイムは70日であった。
納期通りの納品が98%以上に向上し、平均サイクルタイムは30日となった。
Genencor社
バイオテクノロジーのプラントエンジニアリング
プロジェクトの20%しか、予定通りに完了していなかった。
87%のプロジェクトが、予定通りに完了するようになり、即座に、スループットが15%も向上した。
Hamilton Beach/Proctor-Silex社
家庭用電気製品の新製品の開発
年間、34の新製品の開発。74%のプロジェクトのみが予定通りの完了。
増員なしで、第1年で52の新製品開発、第2年では70以上の新製品開発。88%のプロジェクトが予定通りの完了。
HP Digital Camera Group
ハイテク新製品の開発
2004年には、新しく6種類のカメラを市場に投入。1種類のカメラを春の商戦に投入。6種類のカメラの開発プロジェクトのうち、1種類のみ予定通りの完了。
2005年には、新しく15種類のカメラを市場に投入できたが、研究開発費は25%も少なくて済んだ。春の商戦には、7種類のカメラを投入できた。15種類のカメラの開発プロジェクトのすべてが予定通りに完了。
LSI Logic社
ASIC設計テクノロジーの開発
小さなプロジェクトの74%が予定通りに完了していたが、大きなツールの開発プロジェクトは予定が遅れた。
納期遵守度は85%に向上し、プロジェクトは予定通りに完了するようになった。また、大きなツールの開発プロジェクトも好調で、3年連続で、予定通りにリリースされた。
Lucent Technologies社
テレコムスイッチの設計、開発、および、アップグレード 300-400のアクティブなプロジェクトが進行し、毎月30以上のプロジェクトを完了。
サイクルタイムは10%-25%も短くなり、一人あたりのスループットも、45%も高くなった。
Medtronic社
ハイテク医療関係製品の開発
6-9か月ごとに、一つのソフトウエアのリリース。デバイス・プログラムの見通しが立たなかった。
1か月ごとに、一つのソフトウエアのリリース。デバイス・プログラムの開発業務が改善され、プログラムを予定通り完了できるようになった。
ABBAG, Power Technologies Division社
電力送電設備、受注設計
スループットは、300ベイ/年。
スループットは、430ベイ/年にまで増加した。
Oregon Freeze Dry社
食品処理と包装
年間で、72の販売プロジェクト。
年間で、171の販売プロジェクトを完了した。その結果、スループット(金額)が52%も増加した。
Skye Group社
衣類のデザイン
製品の納期遅れが顕著であった。
納期遵守度が100%になった。リードタイムが30%も短縮された。
US Air Force Operational Test & Evaluation Center
戦闘機のシステム検査
6か月で18プロジェクト。納期遵守度は不明。
6か月で26プロジェクト。75%のプロジェクトが予定通りに完了。
サイクルタイムが30%短縮。
US Air Force, Warner Robins Air Logistics Center, C5 Production Line
航空機の修理、オーバーホール
所要時間:240日。1修理サイクルで7機。
所要時間:160日。1修理サイクルで13機。
US Marine Corps Logistics Base, Barstow, CA
大型軍用車両の修理、オーバーホール
MK48の修理サイクルタイム(RCT):168日、LAV25のRCT:180日、MK14のRCT:152日、LAVATのRCT:182日。
MK48の修理サイクルタイム(RCT):82日、LAV25のRCT:124日、MK14のRCT:59日。LAVATのRCT:122日。
US Naval Aviation Depot, Cherry Point
航空機の修理、オーバーホール
H-46の平均ターンアラウンド時間(TAT):225日、H-53の平均TAT:310日。 スループットは23機/年。
H-46の平均TATは167日に短縮。これは、25%の短縮になるが、同時に、作業範囲を拡大できた。
H-53の平均TATは180日に短縮。これは、41%の短縮。6か月で23機のスループットバックログは70%も減少したが、これは、ラインでの同期が向上したため。
US Naval Shipyard, Pearl Harbor
潜水艦の保守、修理
納期通りの納品: 60%以下。ジョブあたりの費用:$5,043。
納期通りの納品: 95%以上。ジョブあたりの費用: $3,355に減少。これは、33%の減。人員:25%の減少、残業:49%の減。
このことは、CCPM導入の最初の年で$900万の節減ができたことを意味する。